私のご主人様
「季龍さん、申し訳ありませんでした」
「いい。次は気を付けろ」
「「はい!!」」
部屋の中には奏多さんと暁さんがいて、すぐに立ち上がると季龍さんに頭を下げた。
私が逃げたら奏多さんと暁さんまで怒られてしまうんだ…。そうだよね。私の見張りって言ってたもんね。
項垂れていると、奏多さんの腕に預けられて、季龍さんは部屋を出ていく。
「足、手当てしてやってくれ。琴音、昨日言ったことに変更はない。もうするな」
最後に足を止め、それだけ言うと今度こそ季龍さんはどこかへ行ってしまった。
季龍さんがいなくなったことで、重苦しい空気になる。奏多さんの顔が見れず、うつむき続けた。
「琴音ちゃん」
ビクッと体が震える。怒られる…固く目を閉じると、頬に温もりを感じる。
恐る恐る目を開けると、奏多さんの顔が目の前にあって、文字通り固まった。
「もう逃げないで。俺たちは琴音ちゃんに危害を加えるつもりはない。…俺は琴音ちゃんと一緒にいたい。だから、逃げないで。ここにいて」
「…」
どうして、そんな悲しい顔をするの?奏多さんの顔は捨てられてしまった子犬みたいで、罪悪感が募る。
恐る恐る頭に手を伸ばす。そっと、髪の毛に触れると、奏多さんは一瞬キョトンとして、微笑むとありがとうって呟いた。