私のご主人様

うつむいていると、足を取られひっくり返りそうになる。

無表情なままの暁さんが、消毒液を片手に足を睨み付けるように見ていた。

「季龍さんが言うから、手当てはしてやる。でも、優しくはしねぇ」

「っ!!?ん…」

容赦なしに消毒液をかけられる。水以上に染みて、悲鳴を上げそうになった。

「暁!そんなやり方じゃ痛いって!!」

「優しくしねぇって言った」

「俺がやるからどけ!」

見ていられなくなったのか、奏多さんが暁さんを押し退ける。

救急箱に手を伸ばした奏多さんは、ガーゼをとるとたっぷり消毒液を染み込ませる。そして、次に取り出したのは絆創膏。

「琴音ちゃん、痛いだろうけど我慢してね」

「!」

どっちにしろ痛い!!

ガーゼを押し当てる奏多さんは、なぜかガーゼを離すことはしない。

不思議に思って見ていると、絆創膏を剥がし始めた奏多さんは、何を思ったかガーゼを傷に押さえたまま、絆創膏で止めようとする。
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