私のご主人様

暁くんは、そっぽを向いて段ボールを中身の入った段ボールを近くに持ってきてくれる。

本当だ。表面上はツンツンしてるけど、暁くん優しいんだ。

「ん?暁、お前ここちゃんの言いたいこと分かるの?」

「…唇の動きで分かります」

「え、すっげ。読唇術じゃん。どこで覚えたんだ?」

「…」

暁くんの言葉が不意に途切れる。聞かれたくないことなのかな…。

「伸洋、やめろ」

「へー」

季龍さんの一言で伸洋さんは引き下がる。やっぱり何かあるんだ。

でも、それに私は踏み込むべきじゃない。黙って大量の荷物から欲しいものを抜き出すことに専念した。

「これで全部か?」

「コクコク」

結局残ったのは段ボール3つと少し溢れた。奏多さんは大量の返品物を少し悲しげに見つめていた。

「奏多さん、勝手に注文すんの禁止。これ返品やっといてください」

「はい…」

多分注文表を渡している暁くん。その注文表には赤線が引いてあって、返品しないものなんだと思う。
< 176 / 291 >

この作品をシェア

pagetop