私のご主人様
何でだろう。ここの人たちはみんな、私が買われてきたことを知ってるはずなのに、そんなことどうでもいいと言わんばかりに受け入れてくれる。
むしろ、家族だって、迎え入れようとしてくれる。
それが気恥ずかしくて、少し複雑だ。
「ことねぇ、本当は喋りたいんだけど、宿題終わってなくてヤバイの!お願い手伝ってぇ」
と言いながら取り出してきたのは中学1年生と書かれた懐かしい春休み用のワークだ。
『私、うまく教えられるか』
「もう分かんないからお願い!声出なくても、筆談でも何でもいいから!」
『了解です』
これは筆談と言うのかな?ほぼ途中で遮られるよ?
梨々香さんに手を引っ張られて、低いテーブルの前に座らされる。隣にぴったりくっつくようにして座った梨々香さんは、早速ワークを開く。
うん。拒否権はないみたい。
諦めて一緒にワークを覗き込んだ。