私のご主人様

「話がある。後で部屋に行くから、寝るなよ」

「…コクン」

話…?ってなんだろう。

季龍さんが先に部屋から出て、どこかへ行ってしまう。その背を見送っていると、ぐいっと手を引っ張られる。

「ことねぇ、行こ?」

「コク」

梨々香ちゃんに引っ張られていく。部屋を離れる直前、奏多さんと暁くんにギリギリで頭を下げれた。

「ことねぇ、迷惑じゃ、なかった?」

お風呂場に引っ張られていく途中、さっきまでの元気さはどこへ行ったのか、弱々しい声でそんなことを聞いてくる梨々香ちゃん。

少し怖がっているような姿に、頬が緩む。

『全然、迷惑なんて思ってないよ』

「本当?ほんとに、ほんと?」

「コクコク」

「よかったぁ。ことねぇ優しいね」

ホッとしたように笑顔を見せた梨々香ちゃんは、気を取り直してまた元気よく笑ってくれる。

だから、隠された怯えには気づかない振りをした。
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