私のご主人様

「梨々香が悪かったな」

「!」

謝罪!?そんな謝られることでもないのに。首を横にふると、季龍さんは眉をひそめてしまう。

だけど、その表情はすぐに消え、代わりに見せたのはあまりにも冷たい目だった。

「宮内 琴葉。お前のことは粗方調べさせてもらった」

「!?」

フルネームを突然呼ばれて驚く。調べるって、個人情報…。

本当に何者?財閥ってそんな簡単に人の個人情報手に入れちゃうの?

そんな馬鹿な質問も、崩れない季龍さんの冷たい目に自然と消える。

「知った上で言うが、父親に会わせる気はない。お前の幼馴染みにもだ」

「っ…」

「お前がなぜ売られたのかも分かってる。だけどな、俺にとってはお前の都合は関係ない。お前を買ったのは、必要だったからだ。だから大金をかけた。かける価値があると判断したからだ」

「…」

「父親や幼馴染みに会わせれば、必ず返せと言ってくることは目に見えてる。俺はみすみすお前を手放すつもりはない。お前にかけた金を払うと言われてもだ」

唐突に始まった話に頭はついていかない。

ただ分かったのは、もう帰れるどころか、許可を得てお父さんたちに会えることすらないと言うこと。

やっぱりあれがラストチャンスだったんだ。あの時、警察に逃げ切れていれば…。
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