私のご主人様
5.大家族の正体
限界
奏多said
「琴音ちゃん、楽しそうだったね」
「別に」
「暁、何でそう冷たくしようとするかなぁ。琴音ちゃんのこと結構気にしてるくせに」
台所で後片付けをしながら暁に話しかけると、そっぽを向かれる。
恥ずかしがらなくてもいいのにな。
1つ年下の暁とこうやって話すようになったのは実は若が琴音ちゃんを連れてきた時から。
『2人でこいつを見張れ。絶対に逃がすな。…だが、優しくしろ。こいつは表の人間だ』
若にそう言われた時には思わず耳を疑った。
まだ若いながらにも、俺たち以上の決断を下し、大人顔負けの仕事をこなしてきた若。
そんな若が闇の売買で買ってきた女の子に優しさを向けるなんて、正直あり得ないと思った。
前の子達なんか酷いもんで粗相をしでかした瞬間に切り捨ててきたと言うのに。
それなのに、琴音ちゃんに限っては声がでないというハンデを持っていても手放そうとしない。
それどころか、逃げ出したのに縛り付けることもせずここに留めた。
普通なら、声がでないとわかった時点で手放していたはずなのに。