私のご主人様

「琴音ちゃん」

「…っうあ、あ…」

「琴音ちゃん」

肩に手を添えるようにそっと触れただけなのに、異常なほど跳ね上がる肩。

はっきりと俺を写したその瞳は一瞬で恐怖の色に染まる。

「こと…」

「っうわぁぁああ!!やめてっ!!助けて!!!」

「琴音!落ち着けっ!」

「いやぁぁあああ!!来ないでぇぇええ!!!」

何かから逃れるように俺たちの手を振り払う琴音ちゃんの目から大粒の涙がこぼれ落ちていく。

叫び声を上げ続ける琴音ちゃんは、俺たちをはっきりと見つめているはずなのに、まるで別の人物を写しているかのようだった。

「琴音ちゃん、大丈夫。何もしない。だから落ち着いて」

「あ…あ…」

「大丈夫。絶対に傷つけない。約束する。だから、深呼吸しな。大丈夫だから」

騒ぎを聞き付けた人が集まってくる。だけど、異常を感じてなのか部屋には全く足を踏み入れようとしない。

まだあの視線に気づいていないからいいけど、もし気づいたら…。
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