私のご主人様

「若っ今はダメです!」

「!?」

暁の制止もむなしく、開け放たれた襖。その瞬間、琴音ちゃんの表情が凍りついた。

「若っ出て…」

「うわぁぁああ!!!」

「琴音ちゃん!落ち着いて!」

悲鳴を上げ、立ち上がろうとする琴音ちゃんを無理矢理抱き締める。

なにも見えないように胸に顔を押さえつけ、頭を撫でる。

「いやっいや!!」

「大丈夫だよ。怖くないからね」

がむしゃらに振り回された手足を押さえつけることはせず、ひたすら頭を撫でて落ち着くのを待つ。

しばらくすると荒い息を繰り返すものの、暴れることはせず、大人しくなる。

「…」

「若、ここは俺たちに任せてください」

多分、部屋に入ったところで立ち止まったままの若に暁が声をかける。

さりげなく琴音ちゃんの耳を塞ぎ、あぐらをかた膝の上に抱き上げる。

若はまだ動かない。そっと覗き込んだ琴音ちゃんは、声を上げないまま涙をこぼし続けている。

「若、お願いします」

「…」

「部屋から出てください。今琴音ちゃんにはなにも声をかけないでください。お願いします」
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