私のご主人様
「あぁ、すみません。旦那様とご一緒するので、これごと」
「!?」
旦那様!?ってことは希龍さんのお父さんってことだよね?
まずいまずい!!そんな偉い方にちゃんと淹れたコーヒーじゃないのに出せないよっ!
『淹れ直します。いや、淹れ直させてください!!』
「大丈夫ですよ。最初から見てましたが、とてもお上手です」
誉められたっ!でもそうじゃないんです!
必死に打ち込もうとしていると、その手を掴まれてしまった上に笑われた。
「いや、失礼。では、明日からは淹れたてを頂けますか?」
「…」
い、いいのかな…。
マグカップをもう1つ手に取った田部さんは、2つのマグカップとコーヒーをお盆に乗せて、笑う。
「では、明日の朝から頼みますね」
「コク」
「あぁ、それと。これから食事を作られるときは、2人分だけ別に用意をお願いします。旦那様は足か不自由ですので、食事は別にとっていらっしゃるので。よろしくお願いしますね」
「コクコク」
「…本当に可愛らしい方ですね。いずれ、旦那様にもお会いになってください。その時は、この田部が声をかけさせていただきますので。では、夜の食事、楽しみにしています」
ご丁寧に頭を下げて下さった田部さんは、お盆に乗せたコーヒーを持って台所を出ていった。