私のご主人様
「って、琴音ちゃん大丈夫?」
「?」
急に心配そうな顔をする奏多さんに首をかしげる。
心配されるようなことあったかな…。昨日も知らないうちに寝てたから、お風呂の後2人と話してないはずだし…。
あ、もしかして畳で寝てたから風邪引いてないか心配してくれたのかな。
『大丈夫ですよ?』
「…そっか。なら、いいんだけどね」
なんだかぎこちない笑みを見せる奏多さんに逆に不安になる。
私、昨日何かしたのかな。季龍さんと話してからの記憶が全くない。
思い出そうと考えていると、頭に手を置かれて顔をあげる。
「琴音ちゃん、何かあったらすぐに言うんだよ。約束ね」
「…コク」
優しくしないで。さっき決めたばかりなのに、決心が鈍る。
お父さんのところに帰るんだ。そのために、逃げるチャンスを作るためにこの人たちにとって信頼できる者にならなきゃいけないんだ。
そう思ってるはずなのに、早くも決心は揺らいで簡単に折れそうになる。
この人たちの優しさに甘えたくなってしまう。
何とか笑顔を浮かべて、誤魔化すように振る舞った。