私のご主人様
「…琴音、誰かに会ったのか」
「“田部さんって人に会ったよ”」
「…田部さんが?」
「え、琴音ちゃん田部さんに会ったの?」
びっくりしたように目を丸くする2人。そんなに珍しいのかな。
コーヒー取りに来て明日からも頼まれたと伝えると、2人は意外そうな顔をする。
「田部さんはか…っえと、親父さん付きだから、俺たちもあまり顔は会わせないんだよ」
明らかに言い直した奏多さん。かってなんだろう。
首をかしげても、誤魔化すように笑われる。教えてくれないみたい。
「琴音ちゃん、俺もコーヒー飲みたいんだけど、淹れてくれる?」
「!」
そうだ。当初の目的を忘れてた。
2人にコーヒーを淹れるつもりだったんだ。頷いて暁くんも見ると、俺もと返ってきたので早速やろう!
使った道具たちを一旦洗って、またお湯を沸かす間にきれいに水を拭き取ったミルで豆を挽く。
奏多さんと暁くんは興味津々と言わんばかりに手元を覗いてくるから何だか恥ずかしい。