私のご主人様
「お坊っちゃま?」
「病院、連れてく」
「ッ!?だ、大丈夫ですよこれくらい!!」
「ダメだ。自分で怪我したのならまだしも、母さんが負わせた傷だ。陣之内家の者として、責任がある」
「そんな大袈裟な…」
頑ななお坊っちゃま。どうすれば…。
こういうときに助けてくれる内藤様もノリノリで車取りに行ってしまったし…。
あれ、待てよ。内藤様が取りに行った車ってお坊っちゃまの送迎車?
本当にどうしよう…。
「何をしている」
その場に不意に響いた威厳ある声に身が引き締まる。
振り返ると、旦那様とその後ろに控えるお父さんの姿が見えた。
お坊っちゃまの手が離れたのを確認して、旦那様に頭を下げる。
「琴葉を病院に連れてくだけです」
「病院…?」
視線を感じる。うぅ…。おずおずと顔をあげると、旦那様の表情に険が走りました。
「その傷は?」
「…飛んできたマグカップが当たりました」
「なぜマグカップが飛ぶ」
「…奥様が」
「はぁ…百合花の癇癪だな」
「あはは…」