私のご主人様
「だから、今日は季龍さんたちと食べておいで」
「…」
っう…。今日はダメなんだ…。なら今日食べなくてもいい。
奏多さんの服をつかんで嫌だって言葉にしないなりに伝えると、苦笑が返ってくる。
「季龍さんがあっちに席を置くって決めたんだって。お嬢も喜ぶだろうし、行っといで。ちゃんと食べなかったら寝る前にくすぐり倒すから」
「!!?」
最後に爆弾を落とされたような!?
くすぐったいのは苦手。昔は成夜にこれでもかってくらい、いじめられたこともある。
もちろん殴り返したけど…。
そんな思い出に浸っている場合じゃない。くすぐられるのとあそこに戻るの、究極の2択が目の前に…。
うう、どっちも嫌すぎてどうすれば…。
「琴音」
「!」
突然聞こえてきた声に振り返ると、呆れ顔の季龍さんがいて、手を差し出してくれる。
「戻るぞ。飯が冷たくなるだろうが」
「…」
…どうして。放っておけばいいのに。何でわざわざ季龍さん自ら迎えに来てくれるの?
こんなの、あり得ない。だって、使用人のために主人が自ら動くなんて…。