私のご主人様

「ほら、琴音ちゃん」

奏多さんに背中を押され、季龍さんが差し出してくれた手を掴む。

その手はあっという間に私を立ち上がらせてくれる。それで離れるかと思えば、手は繋がれたまま、さっき座っていた上座に戻ってくる。

「ことねぇ、肉じゃがもから揚げもすごくおいしい!」

「…」

「梨々香、行儀が悪い」

「はーい」

出迎えてくれた梨々香ちゃんは口にいっぱい詰めていて、まるでハムスターみたいになっててかわいかった。

満面の笑みでおいしいって言ってくれたことに、心の奥がじんわり温かくなる。

…ふわちゃんみたいだ。作ったものをおいしいって、すごく嬉しそうに食べてくれて。

顔を上げる。たくさんの男の人たちがみんな、嬉しそうな顔で、楽しそうに食べてくれる。

『琴葉が作ったの?ふーん』

あんな顔と大違い。興味ない顔で、何にも言わずに食べてる奥様とは、大違いだ。
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