私のご主人様
季龍さんが険しい顔をしたまま黙り続ける間、私も季龍さんにタブレットを向けたまま固まる。
んん?じーっと待っていると、ふらふらと伸洋さんがやって来る。
伸洋さんさっきから大移動してる気がする。
「ここちゃん食べたか~?」
ちょっとお酒臭い伸洋さんは上機嫌だけど、足元が若干危うい。
季龍さんの前に腰を下ろした伸洋さんは、タブレットを見て急に吹き出す。
「え、ここちゃんまだ知らなかったの?ここはね~」
「伸洋!」
伸洋さんの声に、季龍さんの鋭い声が飛ぶ。
だけど、次の瞬間伸洋さんの口から出た言葉に、耳を疑う。
「組だよ」
「?」
く、組。…組ってまさか?いや、まさかそんな…。
「あれ。わかんねぇ?ヤクザとか、暴力団って言い方もあるな!」
頭をよぎった組織に、違っていて欲しいと思った願いは即座に打ち砕かれた。
時々テレビを賑わせたり、映画やら小説に出てくる、いわゆる悪役の筆頭。そして、そうそう関わる機会なんてないと思っていたのに。
「…!?!?!?」
この人たちがヤクザなの!?で、でもちょっと納得できる面も…。で、でもこんなことって!!
驚いて固まる私に対して、季龍さんが額に手をついてため息をつく。伸洋さんはへらへらしていた。