私のご主人様

「正裕様、お待たせいたし…ん?」

そわそわしていると、内藤様が戻ってこられました。あ、そう言えばお坊っちゃまが車を回してこいっておっしゃっていたような…。

と、ガシッと腕を捕まれました。見れば、お坊っちゃまでした。

「琴葉、行くぞ」

「ッ!?え、お坊っちゃま!?」

「お坊っちゃま。琴葉は私が連れていきます。ご心配をお掛け致しました」

「僕が連れていくと言っているだろ」

「お坊っちゃまにご迷惑はお掛けできません」

お父さんの視線が私に向く。断れってことみたいです。

「お坊っちゃま、父と行きます。ご心配をお掛け致しました」

「…琴葉、俺では不満だと言うのか」

不機嫌な声に勝手に身がすくむ。
ど、どうしましょう。お坊っちゃま怒らせてしまいました…?

「お坊っちゃま、手をお離しになってください。琴葉の腕に跡が付きますよ」

「内藤!お前は黙って…」

「父親が連れていくと言っているんです。お坊っちゃまが出る幕ではございません。押し付けがましい恩は売らないように」

「っ!?…琴葉、診断がついたら連絡しろ。処置から完治期間まで、全てだ」

「っは、はい」

ばっと離された手。足取り荒々しく去っていくお坊っちゃまの背を見送りました。

なんであんなに怒っていらっしゃったのか…。謎です。
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