私のご主人様

「飯作る時間には戻るから」

「…コクン」

いやいや、夕食作りまでに何時間あると…。3時間あるよ?

私がいうのも変だけど、本当に見張りの意味なくないですか?

「…掃除、明日手伝うから今日は休んでろ」

…テレビもないのに3時間も何をしろと?

暁くんは行き辛そうにしながら、ゆっくりとした足取りで部屋を出ていった。もちろん、何回も振り返りながら。

2人がいなくなった部屋で1人。シンと静まり返った部屋に気持ち悪さを感じて壁に避難する。

そういえば、こうやって1人になるのは久しぶり。何せ逃げようとした日から、奏多さんと暁くんがほぼ傍にいたからこんな昼間に1人なんてあの日以来だ。

「!」

そうだ。1人なんだ。

見張りもいない。逃げようと思えば逃げられるこの状況。

…どうして?信用されたから?それとも、逃げようとしないか確認するため?
< 277 / 291 >

この作品をシェア

pagetop