私のご主人様

「琴音ちゃん、これから時々俺たち外すことがあると思うから、ごめんね」

「?」

…どうして奏多さんが暁くんがいなかったことを知ってるの?

暁くんが部屋を出たのは奏多さんより後。元から知ってるなら一緒に出たっていいはずなのに。

…やっぱり試されるんだ。逃げるか逃げるか、確かめるためにわざとだったんだ。

チクリと心が傷む。

しょうがないよ。実際、逃げてるわけで、2人は私の見張りなんだから。

試すことがあったっておかしくない。2人の仕事は私をここに留めることなんだから。

きゅっと手を握る。何となく目を合わせられなくて、視線をそらした。

「…琴音ちゃん、ごめんね」

ほら、なんで謝るの?それは、試してごめんってそういう意味だから?

首を横に振って、さりげなく奏多さんから離れる。

分かってた。それをはっきりさせられただけ。なのに、何となく寂しい気持ちは離れなかった。
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