私のご主人様

「…琴音、俺はお前が逃げない限り、普通にしてる」

「暁」

「避けんな。お前も、俺もやりにくいだろ」

奏多さんの制止の声も無視して続けた暁くんの言葉は素直で、本心だってことがわかる。

そのままいつもと変わらない態度で出来たご飯をワゴンに乗せる暁くんに、少しだけホッとする。

…そっか、私2人のことこんなに信用してたんだ。

だから、試されたことがショックで、彼らの見方が変わることを恐れたんだ。

だめだなぁ、私。信用させるんじゃなくて、私が2人のこと信用してたんだ。

「…琴音ちゃん、俺はっ!?」

なにかを言いかけた奏多さんに抱きついて、それ以上言わせない。

奏多さんは妹って言ってくれた。嘘でも、そのままがいい。

ぎゅっと抱きついていると、抱き締め返してくれる。

「俺がいなくて寂しかったの?しょうがない妹だね」

それでこそ、奏多さんだ。

顔を上げて笑うと、笑い返してくれる。それで十分だ。
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