私のご主人様

「1週間したら抜糸に来てくださいね。お大事に」

「あい。ありがとうごじゃいましゅ」

赤ちゃん言葉みたいになったら、先生がくすって笑ってました。恥ずかしい…。

診察室を出て、外で待っていたお父さんが立ち上がってすぐに来てくれました。

「大丈夫か?」

「2針だって。1週間後抜糸来てくださいって」

「そうか…。ごめんな、琴葉」

「お父さんのせいじゃないよ?」

私よりもずっと傷ついてるような顔をするお父さん。

お父さんはいつもそう。仕事で私が傷ついたり、泣いたりするといつもごめんって謝る。

お父さんのせいじゃないっていくら言っても、お父さんは首を横に降る。それは今もそうだった。

「お父さん…」

口を開いたとき、ぐーとその場に似合わない音がした。その音は私のお腹からで…。

「「…」」

思わず無言。そして、おまけのようにきゅっと鳴った。

…お腹すいた。うん、そう言えばもう20時だもんね。…うん。
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