私のご主人様

コーヒーを出してすぐに厨房にお昼を取りに行く。

はぁ、今日ここ何往復するはめになるんだよー。

お昼はフランス料理のフルコース。昼間っからこんなのすごすぎる。

そして、奥様はそんなこと何にも気にしない。

「琴葉、やっぱりお寿司にしましょう」

「…いや、あの…」

「よろしく!」

「…」

お昼今運んできたんですが?料理長、腕によりをかけて作ってくださったんですが!?

お客様の方がおろおろしてますよ。全くもう…。

落ち着け。いつものことだ。料理長に怒られる…。

今並べたばかりの料理をワゴンに戻して、お部屋を出る。そして、厨房に入って料理長にご報告。

あー。もう目が据わってるよぉ…。

「料理長、申し訳ありませんが、お寿司をご所望されておられます」

「…あのね、食材だって生きてるんだよ?そんなすぐ言われて用意できると思う?」

「申し訳ありません」

「奥様がわがままなのは知ってるけど、そこは専属にコントロールしてもらわなきゃ。こっちだってやってらんないよ」

「すみません…」

「はぁ、30分かかるから、出てな」

「はい…」

厨房を出て、廊下にしゃがみこむ。

ヤバい。気持ち悪い…。頭がくらくらして、吐きそうになる。
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