私のご主人様

やれるんならやってるよ。奥様のわがままなんかコントロールできるわけないじゃん。

料理長は決して嫌な人ではない。彼だって奥様のわがままに振り回される1人だ。

わかってる。だけど、それを私に当てないで欲しい。私だって、こんないろんな人に迷惑かけて、それでも逆らえなくて、それが嫌で嫌でしょうがない。

もう嫌。やめたいよ…。お母さん助けて…。

「こと…は?」

「ッ!?…成夜」

「なにやってんだよ。お前も昼休憩?一緒に行こうぜ」

スーツ着てる…。当たり前なんだけど、なんなか変なの。

でも、なんか似合ってる。…

「成夜って老け顔なんだ」

「あ゛?んだと、もういっぺん言ってみろ!!」

「っ!?」

「宮内さん!さっさと持っていかなくていいのか!?」

突然の怒鳴り声に我に返る。厨房の入り口にはイライラを全開にした料理長がいて、自分でも青ざめたのがわかった。

いつの間に30分経っていたんだろう。全然気付かなかった。

「申し訳ありませんでした。ありがとうございます」

「もう変更はなしだから。奥様にも重々伝えておくように!」

「はい」

バンッと大きな音をたてて閉じられた厨房。はぁ、料理長ぶちギレだ…。
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