私のご主人様

お坊っちゃまの部屋に入るの久しぶりかもしれない…。

そんな感銘はよくて、ドアをノックして、返事が来たのを聞いて口を開く。

「お坊っちゃま、琴葉です」

「入れ」

「失礼いたします」

ドアを開けると、お坊っちゃまお1人だけでした。いつもなら内藤様か他の使用人がいるのに珍しいな…。

お坊っちゃまは勉強中だったのか、参考書を開いたままでした。

「お勉強中でしたか?出直します」

「いや、いい。わざわざ悪かったな」

「いえ…」

お坊っちゃまは立ち上がると、こちらに歩いてくる。

とりあえずドアの近くで立ち止まっていると、お坊っちゃまは私の隣を通り過ぎて、ドアの前に立つと、おもむろに鍵をかけた。

1つだけじゃない。ドアに直接ついている鍵の他にも、後から取り付けたらしい鍵を次々にかけていく。

「お坊っちゃま…?」

「ん?」

「なぜ鍵を…?こんなにたくさん…」

「あぁ、邪魔されたくないから」

「え?」

最後の1つ、南京錠が閉じられて、ようやくお坊っちゃまの手が止まる。

あれ、そう言えばどうしてカーテンが閉められているんだろう。それに、電気すらついてない。

そのせいで昼間なのに薄暗くて、なんだか落ち着かない。
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