私のご主人様

『お坊っちゃまと2人きりにならないようにな』

不意にお父さんの言葉を思い出す。そう言えばこの状況2人きりだ。

そんなことをぼんやり考えていると、不意に目の前が陰る。あれ?

顔をあげると、目の前にお坊っちゃまがいて、そのお顔が急に近づいてくる。

「ッん!?」

え、ナンデ…?なんで、お坊っちゃまが目の前にいるの…?

今、私は何をしてる…?

急に口の中に流れ込んでくる何か。それが水であることに気づいたと同時に急速に我に返る。

「っ!?んっ…んん!!」

離れようとした瞬間に頭と腰に手が回ってきて逃げられない。

重なった口のせいで口の中のものすら吐き出せなくて、息苦しさに耐えきれなくなったと同時に飲み込んでしまった。

すぐに離れた口。腕の力も消えたことで、その場に崩れ落ちるように座り込んだ。

「っげほっげほ!?」

「…」

「…はぁ、はぁ…お坊っちゃま?」

お坊っちゃまは何を…?

私を見下ろすお坊っちゃまは表情が変わらなくて、なのに目だけはギラギラと輝いている。
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