私のご主人様
彼の名前は陣之内 正裕(じんのうち まさひろ)様。多くの人を引き寄せるルックスをお持ちの上、スポーツ万能、頭脳明晰ときた。
さらに家柄がこの香蘭学園でも群を抜いてる。随一と言っても過言ではない。
そんな彼はもちろん、学園の王子様です。
そして、やっと私の素性の話に戻りまして、察している方もいらっしゃいますでしょうが、一応ご紹介を。
宮内 琴葉。15歳。中学生3年生。
そして、陣之内家の使用人です。
「正裕様、何かありましたか?」
「今日、早瀬川が来る。茶菓子を頼みたいんだが」
「はい。内藤様にお伝えすればよろしいのですね」
内藤様はおぼっ…げほん。正裕様の専属の執事さんです。私のお父さんと同じ年頃のダンディーなおじ様。
こっそりあめちゃんをくれるんですよ。これはお父さんにも内緒。
と、正裕様のお顔がまたまた歪む。…どうしてでしょうか?
「琴葉、お前に頼みたいんだが」
「…え?」
私に?…どうしてでしょうか。
私の腕などまだまだ内藤様に遠く及ばす、未熟でできた塊のようなものなのに。
私が作るよりも内藤様が作った方が100倍おいしいはずなんですが…。
そういえば前も弁当を作ってくれと言われたことがあるような……?