私のご主人様
「琴葉」
「っは、…申し訳ありません。そのご命令には従えません」
「…なぜ?」
「本日は奥様がパーティーにご出席なされるので、そのお手伝いをさせていただくお約束がありますので、申し訳ありません」
深々と頭を下げる。
確かに私は陣之内家の使用人。だけど、詳細に言うのであれば、奥様付きの使用人です。
本当はこんな未熟者、専属につけていただくはずではなかったのですが、奥様に一目お会いした時、奥様から熱烈な歓迎を受けた。
是非自分のそばにと私の手を離していただけなかったのも理由のひとつ。
そんなわけで私は奥様の専属使用人なのです。
なので、本来息子である正裕様とは関わりがほとんどないはず。なのですが、同級生ということもあり、お坊っちゃまは度々声をかけてくださいます。
ですが、やはり私は奥様の使用人としての仕事を優先しないわけにはいかず、お坊っちゃまのご命令にはほとんど従えないという現実です。
「どうしても無理か」
「はい。無理です」
「…」
粘りを見せるお坊っちゃまを一刀両断。こうでもしなければお坊っちゃまは諦めてくださらないのです。
ため息をついたお坊っちゃまは、分かったと言って席に戻られました。