私のご主人様
「そんな…困ります!琴葉ちゃんがいなかったら、奥様の面倒は誰が見るんですか!」
「私たち、奥様の専属じゃないのにっ!人がいないって言われて、琴葉ちゃんが戻ってくるまでって約束なんですよ!?」
「そんな無責任なこと言わないでください!!私たちはどうなるんですか!!」
1人を皮切りに次々に口を開いたメイドさんたちは、さきほどまでの優しげな笑みなど消え去って、私を睨み付けてくる。
そんなメイドさんたちの迫力に流石のお父さんも驚いたように目を見開いた。
「琴葉ちゃん!ダメよっやめちゃダメ!!」
「琴葉ちゃん奥様の専属じゃない!せめて後任を決めてからやめてよ!こっちだって、いきなり奥様につけられてたまったもんじゃないわ!」
「…」
何も言い返せない。言ってやりたいことは山ほどあるのに、悔しくて、苦しくてごちゃごちゃになった心は言葉なんか作れなくい。
般若の如く、恐ろしい顔で詰め寄ってくるメイドさんたちをただ見つめ返すことしかできない。
「…今、娘がどれだけ我慢してると思っておいでですか」
「はぁ!?」
「娘は、あんたたち3人係がたった1ヶ月で音を上げることを、3年間もやって来たんですよ。
奥様の命令に嫌な顔ひとつせず、貴重な学生生活すら犠牲にして、毎日のように仕えて3年。
…そして、その仕打ちがお坊っちゃまの凶行。
娘が今、どんな気持ちでここにいると思っているんです?
あんたたちが同じことをされて、またここに戻ってこれると言えるんですか!?」