私のご主人様
「ならば、あなた方が琴葉にした仕打ち、すべて訴えさせていただくことにします」
「はぁ?訴えるですって!?そんなこと…」
「労働省のコピーですが、『中学生以下の児童については、修学時間を足して1週40時間、修学時間を足して1日7時間までしか働かせることができません』とあります。ですが、琴葉は就労時間だけで週に40時間を越えています。これは立派な法違反です」
お父さんの演説のような言葉に奥様は黙った。流石に反論は出来ないみたいだ。
だけど、お父さんは止まらない。その目は怒りと悲しみに満ちている。
「それに、お坊っちゃまが娘にした仕打ち、訴えさせていただきます」
「宮内!!」
「なぜ旦那様が上に立つんです?娘は被害者で、あなた方は加害者だ。なのに、謝罪の1つもなく、娘に責任があると、自身の息子を省みようともしない。謝罪の1つでもあればこのまま泣き寝入りしたかもしれませんがね」
「っく…宮内、貴様…」
「それでは、また法廷でお会いしましょう。時期に弁護士から連絡があると思うので、失礼いたします」
お父さんは私の手を掴み直すと、荒々しくドアを開けて旦那様の部屋を出た。
お父さんに手を引かれたまま歩く。前を歩く背は大きくて、守ってくれたんだって、心の底からほっとする。
使用人さんたちとすれ違いながら駐車場まで来ると、お父さんは急に大きく息を吐き出した。