私のご主人様
「お父さん…?」
「っはは、今さらになって手が震えてきたよ…。琴葉、今まで本当に」
「謝らないで。お父さんが守ってくれたの、すごく嬉しかった。自慢のお父さんだよ」
「っ…そ、そうか」
照れ臭そうに笑うお父さんは、わざとらしい咳払いをして、行くかって車に乗り込んだ。
助手席に乗り込むと、すぐに車は動いて屋敷をあとにする。
「琴葉、新しい職場なんだけどな。そこの娘さんが、お前のこと誉めてたよ」
「え?…まさか、花咲さん!?」
「あぁ。高校が違うことをすごく悔やんでおいでだった。旦那様も、どうかこれからも仲良くしてほしいと、使用人としてではなく、友人としてお願いされていたよ」
お父さんの言葉に、ふわちゃんが目の前で笑ってる姿が頭に浮かぶ。
あれ以来、中学は行けなくて、卒業式にもでなかった。後悔はしてない。でも、ふわちゃんに会えなくなって、約束が守れなかったのは心残りだった。
香蘭で唯一、私をまっすぐ見て、立場なんか気にせずに友達になってくれたふわちゃん。
お父さんが繋いでくれた縁。またふわちゃんに会えるんだって思うと嬉しかった。