私のご主人様

「あぁ、でも使用人になってくれるなら、是非って言っていたよ」

「…お父さん、ありがとう」

「いや、この縁はお前のお陰だよ。琴葉が花咲さんと仲良くしていたから、旦那様がわざわざスカウトしに来てくれたんだ」

「え?そうなの…?」

「2年前にな。そのときは琴葉が欲しかったみたいだったが、話をするうちに私自身のことも買ってくれるようになってね。陣之内の労働状況を説明したら、うちはそんなことさせないと怒っていらっしゃった」

「花咲さんは、とっても素直なの。きっと、素敵な旦那様だよ」

「あぁ、そうだな」

なんだかずっとこんな時間はなかった気がする。

いつも気を張って、頑張ってたのかな。解放感が心を満たして、体が軽い。

楽しくて、鼻歌を歌っているとお父さんが笑っているような気がした。

家に戻ってくると、冷蔵庫に何にもなかった。お昼は残ってた乾麺を茹でて、夜はどうしようかなぁ…。

「お父さん、夜なに食べたい?」

「作るのか?食べに行っても…」

「ダーメ!今日は作るの!」

「分かった、分かった。それじゃあ、ハンバーグかな」

「はーい!ねぇ、ケーキ買ってきていい?お祝いだもん!」

「っぷ…お祝いか。たまにはいいか」

お父さんの顔楽しそう。嬉しくて、笑顔になれる。
< 76 / 291 >

この作品をシェア

pagetop