私のご主人様

1人混乱する私を嘲笑うように、お坊っちゃまは何かを書き終えると、その紙を男に突き返す。

「毎度あり」

もう1人の男が手にしたアタッシュケースをソファーの前に置かれた机に置く。

そのソファーに移動したお坊っちゃまは、アタッシュケースを開け、中身を手に取る。

それは札束で、あり得ない分厚さを持っていた。

「それにしても、お前も不運な奴だな。このお坊ちゃん、頭イカれてるぜ?」

「自分のものにならないなら売っちまおうだなんて、こぇえ奴に好かれたなぁ」

男たちは私を憐れんでいるかのように振る舞いながらも、その顔は完全に嘲笑ったもの。

黒いアタッシュケースを開けると、そこには拘束具が隙間なく詰め込まれている。

それを慣れたように手にする男たちに、自分でも青ざめたのが分かった。

「…あ、う…」

「ムダムダ。声なんか出ねぇよ」

「今さらお坊ちゃんに助けを求めてもムダだぜ。お前は、売られたんだよ」

なにも抵抗できない私に次々にかけられていく拘束。

手足にはまるで猛獣を縛るような枷をはめられ、首にも重厚な枷がはまる。

そんな私を、お坊っちゃまはやはり無表情で見下ろしている。だけど、そんな顔が突然笑みに変わる。
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