私のご主人様
「じゃあね、琴葉。ま、琴葉ならすぐ買い手がつくよ」
まるでおもちゃを手放すように、お坊っちゃまは満面の笑みでそう言い放った。
男たちも、ニヤニヤとした顔を隠そうともせず、拘束具をつけた私を見下ろす。
どうして…?どうして私が、こんな…。
私が何をしたの?お坊っちゃまがこんな風に変わってしまったのはどうして…。
男たちは、まだなにか準備を続けている。
1人は大きな袋を、もう1人は細く切られた2枚の布を持って近づいてくる。
「琴葉」
目を覆い隠されそうになった直前、お坊っちゃまの声が響く。男の手が止まり、お坊っちゃまはソファーから立ち上がると、私のところまで来て膝をついた。
耳元に口を寄せるお坊っちゃまはまるで内緒話をするかのように声を潜める。
「大丈夫、すぐ買い戻してあげるから」
「…ぇ」
それだけ言って、何事もなかったかのように立ち上がると、お坊っちゃまは離れていく。
それを合図に、止まった男の手が再び動き、背を向けるお坊っちゃまの姿を見たのが最後、視界は閉ざされた。
ついで布を噛まされ、耳にはヘッドフォンのようなものをつけられると、音がすごく遠くに感じられた。