私のご主人様
「……….!」
急に体が浮かぶ。でもすぐに下ろされ、微かにジッパーを閉じるような音が聞こえる。
感触は布のようだ。なにか袋のようなものに入れられたのかもしれない。
そんなことを冷静に考えてしまう頭は、おかしくなってしまったのか。そんなことも分からない。
「では……………、あ…………………………した」
「……………………」
何か、話すような声が聞こえたような気がした。だけど、音も光も遮られた状態ではなにも分からない。
直後、体は浮かび上がり、肩に担がれたのかお腹の辺りに強い圧迫感がある。
そのまま移動していく。
どこに行くの?嫌だ、嫌だ!!
帰りたいっ!やっと、お父さんと一緒にいられるのにっ!やっと、やっと、普通の高校生になれるのに!!
嫌だっ!お父さん助けて!!!
叫んでも、言葉にならなくて、体は言うことを聞いてくれない。
気持ちだけが焦って、恐怖で震えているのに、それを出すことが全くできない。
やがてお腹の圧迫感は不意に消えて、どこかに下ろされる。
数秒後、聞こえてきたのはエンジン音で、車に乗せられたんだって気づく。
どこに行くの?どこに連れていかれるの!?動かないでっ下ろしてっ!!
そんな願いも虚しく、動き出した車。なんの音も光も感じないまま、車は走り続けた。