私のご主人様

「……….!」

急に体が浮かぶ。でもすぐに下ろされ、微かにジッパーを閉じるような音が聞こえる。

感触は布のようだ。なにか袋のようなものに入れられたのかもしれない。

そんなことを冷静に考えてしまう頭は、おかしくなってしまったのか。そんなことも分からない。

「では……………、あ…………………………した」

「……………………」

何か、話すような声が聞こえたような気がした。だけど、音も光も遮られた状態ではなにも分からない。

直後、体は浮かび上がり、肩に担がれたのかお腹の辺りに強い圧迫感がある。

そのまま移動していく。

どこに行くの?嫌だ、嫌だ!!

帰りたいっ!やっと、お父さんと一緒にいられるのにっ!やっと、やっと、普通の高校生になれるのに!!

嫌だっ!お父さん助けて!!!

叫んでも、言葉にならなくて、体は言うことを聞いてくれない。

気持ちだけが焦って、恐怖で震えているのに、それを出すことが全くできない。

やがてお腹の圧迫感は不意に消えて、どこかに下ろされる。

数秒後、聞こえてきたのはエンジン音で、車に乗せられたんだって気づく。

どこに行くの?どこに連れていかれるの!?動かないでっ下ろしてっ!!

そんな願いも虚しく、動き出した車。なんの音も光も感じないまま、車は走り続けた。
< 84 / 291 >

この作品をシェア

pagetop