私のご主人様

次第に息が苦しくなって、息を吸えと命令する頭を無視して、お湯に浸かり続ける。

『琴葉』

「…っ」

『琴葉、ごめんな』

「…っはぁッゲホゲホ…はぁ、はぁ…」

…なんで、お父さん…。

死ねない。死んだら、お父さんが1人になっちゃう。お父さん置いていったら、絶対に後悔する。

お父さんは、私がいなきゃ、死んじゃう…。

乱れた息を整える。

…生きてれば、なんとかなる。死んだら、そこで終わりだ。

どんなに惨めでも、生きていなきゃ、もう二度とお父さんに会えない!!

覚悟を決めろ。生きて、ここから出る。そして、帰るんだ。

息が整ってからお風呂から出た。脱衣所にはいつの間にかバスタオルと真っ白なワンピースがあった。

当然のように着ていた服はすべてなくなっている。

バスタオルで体を拭き、ワンピースに手を伸ばす。

「…はは、ばっかみたい」

カゴの中はそれで終わり。あの男たちは用意したものを文句を言わずに着ろと言った。

それが、これだ。
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