私のご主人様

その“商品”に、私は加えられてしまったんだ。

この先に何があるかなんて分からない。でも、私は…。

急に目の前に落ちてきた袋。我に返り、顔を上げると男が戻ってきていた。

「好きなの選べ」

「…え」

「食わせてやる。全部食ってもいい」

そう言いながら男は、袋から次々に出すのは多分コンビニのおにぎりやサンドイッチ、お菓子にお酒まであった…。

未成年だし。そんなことを突っ込んでる自分にあきれた。

男は袋の中を全部出し終えると、私を見た。

「何がいい」

「…」

「…こんなこと言うのもおかしいけどな。食ってた方がいい。これから当たり前のように3食食えるとは限らねぇ。下手をすれば、水すら飲ませてもらえねぇかもしれねぇんだ」

「…おかしいよ。そんなの」

「あぁ。そうだな。でもな、お前はもう人じゃねぇ。ご主人様の機嫌を取る“玩具”だ」

「っ…」

最後の、餞別ってわけだ…。

チラッと見えた先に、並べられた食べ物を食い入るように見つめる女の人がいた。

その目は生気がなかったとは思えないくらい、この食べ物を見つめている。

意地なんか、張ってる場合じゃない。
< 97 / 291 >

この作品をシェア

pagetop