私のご主人様
「…サンドイッチ、食べたい」
「ん。食え食え」
ベリッと音を立てて開けられたサンドイッチの袋。1切れを差し出してきた男は、手の拘束を取るつもりはないらしい。
口を開ければ、当たり前のように入れられて、ひと口かじる。
…こんなときでも、美味しいって思えるんだ…。
ひと口食べると、途端にお腹がすいてきて、夢中で差し出されるサンドイッチを食べた。それを何回か繰り返すとさすがに口が乾いてしまう。
「カフェオレ飲めるか?」
察したのか、男は聞きながらもストローを既にさしてる。頷くと、すぐに飲ませてくれた。
「…お前も、不運なやつだよ。風呂屋に自分ら入ってきた奴は、ある意味自業自得だ。金銭感覚っつう日常を捨てちまうんだからな」
「…この人たちは、みんなそうなの?」
「…大方は。自分だって水商売のくせに、そいつが水商売にはまる。遊んでりゃ金がいる。いつしか借金地獄で、経営者に売られる」
男は不思議と質問に答えてくれる。男も出番が来るまでは暇なのかもしれない。