私のご主人様
「他には、そうだな…。ヤクザと付き合ってた奴が捨てられたりだな。それも自業自得だ。そいつを選んだてめぇの目が腐ってんだ」
「…なんで、こんなことしてるの」
「…さぁな。忘れちまった。…たまに、お前みたいな奴がここに来る。裏の世界をなにも知らない、罪も何もない、真っ白な奴が。流石に罪悪感が拭えねぇ」
「…だから、優しくしてくれるの?」
「…これが、優しさって言うならな」
男は床に並んだ食べ物に視線を落とすと、苦笑いを浮かべる。
男が手にしたのはスナック菓子。俺のおすすめ何て言って、有無を言わさず口に押し込められた。
「器用に生きろ。ご主人様の機嫌を損ねることだけはするな。気に入られれば、それなりに生活はできる」
「…出来なかったら、死ぬの?」
「死んだ方がましだ。…愛想よく、ご主人様のご要望の通りに、出来るなら自分から機嫌を取れ。よく相手を見て、要領よく生きろ。そうすれば、少なくともあーはならねぇ」
男が指差した先にいたのは男の人で、床に転がったその男の人は、うわ言のようになにかを呟き続けている。
その男の人の近くにいた女が、そんな男の体を蹴り飛ばす。なのに、男の人は痛みすら感じないのかぶつぶつとなにかを呟き続けていた。
「頭がイカれてる。売れなかったら処分対象だ」
「結局、死ぬんだ」
「惨めに死ぬか、ご主人様の情けで太陽の下で死ぬか。どっちがいい」
「…」
ここで、日の光をもう二度と見ることなく惨めに死になくないなら、男の言う通り、ご主人様に媚を売れってことなんだ…。