クリスマスイブの贈り物
最初に凄い姿を見せてしまったからか、彼女は俺には気取った様子もなく話した。

彼氏と別れたばかりだということ。
おねだりして、買ってくれると約束していたのにご破算になってしまったものを、自分のボーナスをつぎ込んで全て買ってきたこと。

「あんなケチな男となんて別れてよかったんだわ」

鼻で笑って見せる姿にも、なんだか無理が見え見えで。

「じゃあなんで泣いたんだよ」って聞いたら、口を一文字にして、目を潤ませながら、「欲しいもの手に入れて満足したら気が抜けたのよ」とぽつりと言った。

なんだ、まだ好きなんじゃねぇかって思ったけれど。
それ以上突っ込んだらまた泣くだろ? きっと。

「イタイ女だなぁ」って言ったら、ますます拗ねて。
鼻の頭を赤くして、泣くもんかと踏ん張る顔が、化粧を直したばかりの澄ました顔よりも断然かわいく思えて。

「まあ、かわいいけど」

本心からそう言ったら、きょとんとして俺を見てた。

その時、荷物持ちとして彼女を家まで送り、連絡先を交換する。
毎日のように電話して、時々会うようになるまで、それほど時間はたたなかった。

初めての夜、なんとなくお互いの話をした。
愛奈は俺より四歳も年上の二十八歳で、一流企業の事務職をしていた。
俺はしがない宅配業者。
なんとなく打ちのめされた気持ちで、「俺なんかとこんなんなっちゃってよかったの?」と聞いた。

愛奈は拗ねた顔で、俺の唇を奪いに来た。

「肩書とか関係ないでしょ」

愛があれば全てのことを乗り越えられる。
俺たちは多分そんなきれいごとに酔っていたんだ。


< 4 / 8 >

この作品をシェア

pagetop