落ち葉を踏んで


昼時、ランチの美味しい店はどこも行列で、特にこの通りはにぎわっている。

食事に出掛けることもあるけれど、今日は早起きして作った二人分のサンドイッチを抱えて、長蛇の列を横目に足早に通り抜けた。

目指す公園が見えてきて、いつものベンチへ目を凝らす。

黄金の落ち葉が舞い散る一角に彼の背中を見つけて、早歩きから小走りになった。

落ち葉を踏みしめる足音に気がついたのか、首だけを後ろに向けた彼は、すっくと立ち上がり私のもとへ寄ってきた。



「滑るから気を付けて」 



重なった落ち葉に足を取られないよう、私を気遣う手が差し出される。

彼の手を握ると、体中が安らぎに包まれた。



「遅くなるって言ってなかった?」


「午前中の仕事が、予定より早く終わったんだ」


「会えてよかった。今日もいいことありそう。

浅野さんをポケットに入れられたら、そうしたら毎日会えるのに」


「お守り代わりに?」


「そう。いつでもそばにいて……えっと、おなかすいたでしょう? はい、どうぞ」



言いかけた言葉の続きを口にするのが恥ずかしくて、彼の手を引いてベンチに座り、持ってきた包みを開けた。

足を動かすたびに落ち葉がかさかさと音を立てる。

彼と初めて会った日も、銀杏の葉が舞っていた。


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