7年越しのふたりの約束
 スランプに陥った尊は、紗羽の薦めで服のデザインからアクセサリーのデザインに転向した。

 その初めての作品が爆発的なヒットを産み、デザイナーの階段を一気に尊は、かけ上がった。

 そんなヒットを産みながらも、尊の暮らしは質素で今までと代わらず、約束の日に向けての貯金をし、クリスマスは二人だけのひっそりしたものであった。


「尊、すごいきれいだよ、私独り占めだ…。」

 大切な人がいない部屋はひんやりとし、シャンパンやオードブルなど楽しみにしてものが、色褪せて見える。


*****

「えっ!イタリア!」

「あぁ。社長にも薦められてさぁ、スキルアップのためにもいこうと思って。」

 そう打ち明けられたのは、付き合って5年の頃だった。

 離れるなんて考えられない紗羽は、イタリア語なんて話せないのについて行きたい気持ちでいた。

 ついてこいって言われたら答えは、yesだ。

 でも、現実は、"待っていて"と、自分の望んだものではなかった。

 それでも、心が離れなければきっと大丈夫と自分を、奮い立たせ残る決意をする。

 でも、イタリアに行ってからの二年間で、二人の距離は確実に離れて行くのを、紗羽は感じていた。
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