仕組まれた再会〜聖夜のプレゼント〜
私の気持ちも知らないであの男は
『ふっ‥お前は結婚願望を満たす為に俺と付き合っていたのか』
『そうじゃない…あなただから結婚したかったの』
小馬鹿にした笑みを浮かべた彼には、私の気持ちなんて届かない。
『俺とお前は違ってたみたいだな…じゃあ、元気で』
背を向け振り返ることもしないで彼は私の前からいなくなった。
追いかければよかったんじゃないですか?と招待状を持ってきた後輩に言われたけど…28にもなるとプライドが強くて追いかけるなんて惨めに思えてできなかった。
それなら、彼の言った通り新しい出会いをして結婚して見返してやるとその時は意気込んでいたけど…結局、新しい出会いもないまま一年が過ぎて行く。
「結衣さん、彼側の出席者の中に出会いがあるかもしれないですよ。クリスマスイブの日に二次会に出てくれる人なんてお一人様じゃないと出席してくれません。だからですよ、素敵な人に出会えるチャンスなので出席してくださいね」
悪気がないのはわかっているけど、何気に失礼な事を言ってるって気づいる?それにね、素敵な男にはね、もう相手がいて、クリスマスイブの日の二次会になんて参加しないと思うの。
だから、素敵な出会いなんてないと思ってしまうのは年を重ねて現実を知っているから夢を見れないのかな?
「私みたいなアラサーが出席してひかれない?」
意地悪くたずねてみた。
「大丈夫ですよ。彼の友達関係も30代の独身ばかりですから‥」
ふふふって…そこ笑うとこじゃないからね。
もう、言い返す気力も出てこない。
「どっちも出席させていただきます」
そして、クリスマスイブ当日
彼女の披露宴の会場で自分の名前の席に着席し、新郎新婦が入場して式は滞りなく進行して行く。
友人代表のスピーチ
「藤原 陸さんお願いします』って聞こえ、思わず飲んでいたシャンパンでむせてしまった。
同姓同名?
背を向けていた壇上に目を向けると、そこにはいるはずのない彼がいた。
少し、やつれた感があるけどあの頃と変わらない。
陸は、私に気づいたようで視線が合うと片方だけ口角を上げ笑った。
なに?
今の笑い…意味がわからないんだけど。
陸が新郎の武勇伝等をおもしろおかしく話しているけど、陸がいることに動揺して内容なんて頭に残らない。
もう、その後は料理も美味しく感じないし、感動のライトもシーンも上の空だった。