仕組まれた再会〜聖夜のプレゼント〜
新郎新婦が退場して会場が明るくなると、ガヤガヤとにぎやかになり出入り口に向かって歩いて行く人の波に乗り損ねた私は、今だに席についたまま立てないでいた。
「よう、結衣‥」
平気な顔をして話しかけてくるあなたの心境がわからないんだけど…
私は、表情を固まらせたまま彼に振り向く。
「久しぶりね…新郎が陸の友達だなんて知らなかったわ」
あなたが来るなんて知っていたら出席しなかったのに…
「俺は新婦がお前の後輩って知っていたから、ここにお前も来るだろうって楽しみにしてたんだ。二次会も出るだろう?」
楽しみにしてた?
何が?
私が今だに1人でいるのを笑ってやろうとして?
「……そう、それはお生憎様。私は最悪な気分よ」
ガタンと席を立ち、彼をその場に置いて出入り口で出席者を見送る新郎新婦の元に向かった。
「先輩、今日はありがとうございました。二次会も出席してくださいね。クリスマスイブなんで豪華な景品用意してあるんですよ」
「…あのね、二次会なんだけどさ……」
ここで欠席するって言いにくくなっちゃったなぁ…
どうしようと苦笑いしていると、隣に立った男が私の肩を抱き寄せてきて、新郎と固い握手を交わしている。
「今日はおめでとう、そして呼んでくれてありがとうな」
お祝いの席で喧嘩をするわけにもいかず、その場は肩にある手を許してやるしかなかった。
「二次会もこいつと参加させてもらうから、お前らのアツアツぷり見せてもらうよ」
なぁって彼は微笑んでいるけど…私は笑えているのだろうか?
それさえもわからないぐらい、彼の行動に戸惑っている。
そして、目の前の2人にも…
彼と別れた事を知っている新婦はこの現状を疑問にも思っていない様子。
なんなんだ?
私がおかしいのか?
別れた男と平気な顔で会えるほど、まだ傷は癒えてない。
とりあえず、この場を抜け出そうと試みる。
「じゃあ、後で…」
後ろがつかえているアピールを眼差しで訴え、このまま帰ってしまおうと企んだのに、肩を抱き寄せられた現場を目撃していた会社の仲間に捕まり根掘り葉掘りと聞かれるハメになってしまった。
あー、帰るタイミングが…
そう思っているうちに帰れなくなり、二次会会場もホテル内で、私達が別れ話をしたレストランだった事で今日は厄日だと思わずにはいられなかった。