仕組まれた再会〜聖夜のプレゼント〜
クリスマスイブなのにレストランの中は、私が想像していた人数より沢山の参加者で埋め尽くされていた。
そのおかげで何かと近寄って来ようとする彼と距離を置くことに今は成功している。
さっきからなんなのだろうか?
別れた女と今更なんの話がしたいの?
惨めな姿だけは見せたくない。
あなたなんてもう眼中にないのよと見せつけることで私のプライドが保てるなら、話しかけてくる男性に愛想を振り楽しげなふりもする。
だけど、ふと見たガラス窓には痛々しい女が映っていた。
まだ、未練たっぷりのくせにプライドが許さないから素直になれない…
最悪…こんなの私じゃない。
そっと輪の中から離れ庭に出ると幻想的なイルミネーションに目が奪わる。
去年は、見る余裕もなかったな…
フフフっと薄ら笑いがもれ、あの時の自分を思い出してしまう。
「どうしてあの時、陸と別れちゃったんだろう?」
大きな独り言に答えが返ってきた。
「俺は別れたつもりはないけど…」
声のする方に振り向くと、スーツの上着を脱ぎながら近寄ってくる陸がいた。
「…なに言ってるの⁈私達去年の今日、あそこで別れ話したわよね?」
「やっぱりそう感違いしてたか…ほら、寒いだろう?着ていろ」
彼の言っている意味がわからず怒りでワナワナと震えていると、寒いと感違いした彼は上着を私の肩に羽織らせて抱きしめてきた。
懐かしい彼の香りにトキメクも素直になれない私は彼の腕の中で暴れる。
「離してよ…感違いってなに?お前とは結婚は考えられないって陸が言ったのよ。それに他の男のとこへ行けって言ったじゃない?」
ビクともしないで更に腕の力が強まっていく。
「俺はあと時、まだ結婚は考えられないって言わなかったか⁈男として結果を残さないとプロポーズなんてできないって考えは間違ってたのか?」
「そう言ってほしかった」
「そんな情け無い事を言えるわけないだろう…俺にだってプライドがあるんだ。だから、待っててほしかった。好きな奴ができたらって言ったけど、それだって俺のプライドを保つ為の言い訳だった。結衣は俺の夢中だって思いたかったんだ」
「そんなのあなたの勝手な言い分じゃないの。あの時の私がどんなに傷ついたと思っているの?」
「ごめん…結衣の気持ちも考えないで俺はバカだったって思い知らされた。許してくれとは言わない、でももう一度チャンスをくれないか?」