仕組まれた再会〜聖夜のプレゼント〜
「チャンス?」
「そう、去年ここでできなかった事だ」
そう言った瞬間、手を繋いできてレストランに向かって歩き出した。
「ちょ、ちょっと待って…なんなの?」
大股で歩く彼に必死でついていくと、ホール中の人達をかき分け中央に歩いていく。
私達2人のまわりに輪が広がり、人々のざわつきが消えた。
陸は、私が羽織っている上着の右ポケットから小さな箱を出し跪くと、ビロードの箱をぱかっと開け私に向けて差し出した。
「……うそっ」
目の前に輝くダイヤモンドの指輪
「結衣、もう泣かせたりしない。俺と結婚してください」
人々の視線が私の答えを今か今かと待ち望んでいる。
ゴクッと息を呑み人々を見つめると、新婦と目が合い
祈るように胸の前で手を組み、私に頷く姿に彼女に全て仕組まれてたんだ気づいた。
「…結衣、愛してるんだ」
ポロポロと溢れ出す涙が止まらない。
「私が断るって思わないの…」
「断られたって何度だってプロポーズする。今度は俺が…「バカ‥遅いよ」」
嬉しさにさっきまでのプライドも見栄も吹き飛んで彼に飛びつく私に戸惑う彼の手は、私を抱きしめようか迷っている。
うふふと彼の胸の中で笑う私に、彼は首を傾げる。
「結衣?」
「プロポーズしてくれてありがとう…もう、置いていかないでね」
ぎゅっと抱きしめてきた彼はとても嬉しそうにして微笑んだ。
そして、まわりの歓声の声と冷やかしの声に、ここがどこか思い出して赤面している私を優しく包む彼の指先が顎にかかりキスをしてきた。
目を閉じ、彼にしがみついていると新郎からコホンと咳払いをされ声がかかる。
「陸と結衣さんにプレゼントがあるんだけど受け取ってくれるかな?」
ニヤニヤとにやける新郎が手渡してきたものは、封筒のような物だった。
そして、新婦から私に手渡された小さな箱。
『これを着て彼を悩殺してください』
ウフフと笑い呟いたけど彼にも聞こえていたらしい。
「俺たちは抜けます。みなさん楽しんでってください」
そう言い、冷やかしの中を新郎は新婦を連れて出て行った。
みんな、私達のことなんてもう眼中にないようで陸と封筒の中身を見て思わず笑ってしまう。
「あいつらにやられたな…結衣、俺を悩殺してくれる?」
返事の代わりに頷いた。