【完】『傷跡』
この多聞という恋人、リマにすれば何から何まで変わっていた。
まず。
関西弁の彼氏というだけでも初めてなところにきて、初デートのお好み焼き屋で割り勘にされたことがあったのだが、
「そんなん、うちの地元の天王寺では普通やで」
と、実にけろっと言うのである。
そのくせ。
「せやから関東来てから女の子にモテたためしがあらへん」
などと言っては、失敗例を身振り手振りつきで話してリマを笑わせる。
しかし。
お好み焼きのコテの捌きは、やはりさまになっていて、
「こんなんやからいっつもタコ焼きパーティーやと焼き係やねん」
とボヤきつつも綺麗に引っくり返す。