【完】『傷跡』

そういう取り澄ました面がない多聞であったからこそ、相談もしやすく、多聞もそこは面倒見がよかったからか、

「まぁうちやったらそんな見栄は張らんけど、でも男ってアホやから、好きな女の子の前やとカッコつけたがるもんやで」

などと言って、気取る風もない。

そうした多聞の飾り気のない人間味を、リマは魅力的に感じたようであった。

だが。

当然初めての関西弁の彼氏であったから、勝手の違う面もあった。

さきの割り勘もそうだが、意外に下世話な家賃や給料の額の話もする。

リマに訊くことはなかったが、多聞は隠すこともなく言う。

「普通に言うたり言われたりしとってんけどなぁ」

リマが、

「そんなのあまり言わないよ」

と言うと、

「まぁでも、変に隠したりしたかて嫌やろ? うちはリマの前では、秘密はあれへんで」

と明け透けに言う。



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