聖夜に薔薇を
元々散らかさないように気をつけていた為、片付けは思いの外すぐに終わった。
葛西に手伝ってもらいながら荷物を抱え、入口に立った花乃は部屋の中を振り返る。扉の真正面に窓があり、入ってすぐ夜景が眼に飛び込む作りになっているので、ここからもキラキラと瞬く光が見える。ゴージャスなスイートルームに、輝く夜景。この場所で予想外の幸せを手に入れた。まさかこの部屋に入った時にはこんな事になるなんて思っても見なかった。
「何か?」
前にいた葛西が振り返る。
「いえ……仕事はキャンセルされちゃったけど、夢みたいな一瞬だったなと思って。夜景の見えるスイートルームなんて一生縁がないと思ってました」
「気に入ったなら今度部屋を取りましょうか。オフシーズンでないと無理ですが」
社割が効くんです、と言って葛西が意味有りげに唇の端を上げる。そういう表情をすると仕事中よりずっと若く見える。
「え?でもそんな事したら会社にバレるんじゃ……」
ホテルで花乃を見知っているのは葛西だけじゃない。もちろん逆もまた然り。ここに二人で泊まりに来るなんて、見せびらかす様なものだ。
「まあバレるでしょうね。自分としてはそれでも構わないんですが。むしろ見せつけたいくらいだ」
さらりと言われて思わず頬が熱くなる。
「……まさか葛西さんにそんな事言われるとは思いませんでした……」
「幻滅しましたか」
葛西に手伝ってもらいながら荷物を抱え、入口に立った花乃は部屋の中を振り返る。扉の真正面に窓があり、入ってすぐ夜景が眼に飛び込む作りになっているので、ここからもキラキラと瞬く光が見える。ゴージャスなスイートルームに、輝く夜景。この場所で予想外の幸せを手に入れた。まさかこの部屋に入った時にはこんな事になるなんて思っても見なかった。
「何か?」
前にいた葛西が振り返る。
「いえ……仕事はキャンセルされちゃったけど、夢みたいな一瞬だったなと思って。夜景の見えるスイートルームなんて一生縁がないと思ってました」
「気に入ったなら今度部屋を取りましょうか。オフシーズンでないと無理ですが」
社割が効くんです、と言って葛西が意味有りげに唇の端を上げる。そういう表情をすると仕事中よりずっと若く見える。
「え?でもそんな事したら会社にバレるんじゃ……」
ホテルで花乃を見知っているのは葛西だけじゃない。もちろん逆もまた然り。ここに二人で泊まりに来るなんて、見せびらかす様なものだ。
「まあバレるでしょうね。自分としてはそれでも構わないんですが。むしろ見せつけたいくらいだ」
さらりと言われて思わず頬が熱くなる。
「……まさか葛西さんにそんな事言われるとは思いませんでした……」
「幻滅しましたか」