ひとつの輝き
里佳さんと別れた帰り、体に力が入らなかった。
自分の重心がどこなのかもわからなかった。
スーっと何かが抜けていく感じで何もかも空っぽになった気分だった。
里佳さんが帰りに言っていた。
ほんとの事、言うと渉が言ってたんだ…
美央ちゃんは、
“無垢で”
“気高い”
女だって…だから傷つけたくないんだって。
里佳さんは口に人差し指を立てて“これ秘密ね”って言ってた。
でもあたしは、そんな女じゃない…
いつか渉はあたしのマンションのベランダで言ってた。
“ちっぽけな人間なんていねーよ”
“人ってすげー精気もってるって…”
それはきっと、あたしに言ったんじゃなくて、渉は自分の為に言ってたんじゃないかなって思う。
なんでかは、わからないけど…
そう思う。