ひとつの輝き

その2人の中に割り込むようにして、もう一人の男が入ってきた。 

「あー…俺も借りかえしとくわ」 


そう言った瞬間、その男の振り上げた拳が龍斗先輩の頬を直撃していた。 


「きやっ」 

あたしが叫んだ後、龍斗先輩はよろめいてすぐ踏ん張り唾を吐き捨てた。 


あたしは急いで龍斗先輩に駆け付けた。 


「ちょ、大丈夫?」

「美央は帰れ」

「は?」

「美央は帰れって」


今まで見たことのない龍斗先輩に体が震えた。 

今まで優しい声で“美央ちゃん”って呼ぶ声ではない。 

「帰れるわけないじゃん」 

「美央まで巻き添いくらうぞ!それに渉にだって怒られんだろ」 


だから、あたしは渉とは何の関係もないんだよ…



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